大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

那覇地方裁判所 平成8年(わ)327号 判決 1997年5月13日

被告人

本籍及び住居

沖縄県島尻郡豊見城村字上田六一七番地

職業

会社役員 大城繁盛

昭和三年二月二八日生

本籍及び住居

沖縄県島尻郡豊見城村字根差部六〇五番地の四

職業

会社役員 津嘉山善建

昭和一六年一〇月二〇日生

出席検察官

髙島剛一

横井朗

私選弁護人

被告人大城-大城浩(主任)

當真良明

津嘉山-玉城辰彦(主任)

宮﨑政久

主文

被告人大城を懲役一年二か月及び罰金一四〇〇万円に、被告人津嘉山を懲役六か月及び罰金一〇〇万円に処する。

被告人らにおいて、その罰金を完納することができないときは、四万円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人両名は、濵畑康正、高原博喜、奥薗道明、朝木正生、平良銀勇らと共謀の上、被告人大城の所得税を免れようと考え、沖縄県島尻郡豊見城村字田頭田原所在の同人所有の土地を国に売却したにもかかわらず、右土地が右奥薗の所有であるように装って、譲渡収入を除外して所得を秘匿した上

第一  平成五年分の総所得金額が七五六万三七五三円で分離課税による長期譲渡所得金額が三億七四二一万〇四一〇円あったにもかかわらず、平成六年三月一四日、那覇市旭町九番地所在の所轄那覇税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が七五六万三七五三円で、これに対する所得税額は六一万六七〇〇円であり、分離課税による長期譲渡所得金額は零円で、これに対する所得税額はない旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五六八九万八二〇〇円と右申告税額との差額五六二八万一五〇〇円を免れた。

第二  平成六年分の総所得金額が九四七万四八一四円で分離課税による長期譲渡所得金額が一億〇一四五万四四〇二円あったにもかかわらず、平成七年三月一四日、前記那覇税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が九四七万四八一四円で、これに対する所得税額は八五万九六〇〇円であり、分離課税による長期譲渡所得金額は零円で、これに対する所得税額はない旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一四五二万〇八〇〇円と右申告税額との差額一三六六万一二〇〇円を免れた。

(証拠) 括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。

判示全事実について

一  被告人大城の

1 公判供述

2 検察官調書六通(乙二~七)

一  被告人津嘉山の

1 公判供述

2 検察官調書(乙一九)

一  以下の者の各検察官調書

高原博喜(六通-いずれも謄本、甲二~七)、朝木正生(三通-いずれも謄本、甲九~一一)、奥薗道明(三通-いずれも謄本、甲一三~一五)、濵畑康正(謄本、甲一六)、平良銀勇(五通、乙一〇~一四)

一  検証調書(甲一七)

一  電話聴取書(甲一八)

一  沖縄国税事務所収税官吏大蔵事務官作成の調査書五通(甲一九~二三)

(法令の適用)

被告人大城の判示各所為は、平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法(以下「旧法」という。)六〇条、所得税法二三八条一項に、被告人津嘉山の判示各所為は、旧法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項にそれぞれ該当する。

被告人らについて、いずれも所定刑中懲役刑と罰金刑を選択し、被告人大城については、なお情状により所得税法二三八条二項を適用して各罪についての罰金は免れた所得税の額に相当する金額以下とすることとし、以上は旧法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪の罰金額(被告人大城については、免れた所得税の額に相当する金額)を合算し、その刑期及び罰金額の範囲内で、被告人大城を懲役一年二か月及び罰金一四〇〇万円に、被告人津嘉山を懲役六か月及び罰金一〇〇万円に処する。

被告人らにおいて、その罰金を完納することができないときは、同法一八条により、四万円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。

被告人両名につき、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

(量刑理由)

一1  本件は、被告人大城が自己の所有土地を道路用地として二年度にわたり国に売却するにあたり、被告人津嘉山らを通じ、全国同和連合会会長を自称する濵畑を主犯格とする脱税請負グループ(以下「本件グループ」という。)に依頼して、右土地を他人所有であるように装い、譲渡収入を除外して所得を秘匿し、虚偽の所得税確定申告書を提出するなどして二年分にわたって脱税したという事案である。

2  本件ほ脱税額は合計約七〇〇〇万円と多額である上、正規の所得税額に対するほ脱税額の割合(ほ脱税率)も、九五パーセントを超える高率である。また、本件脱税は、組織的かつ常習的に脱税を請け負っていた本件グループに依頼しており、その具体的方法は、本件グループの一員が被告人大城の土地の所有者を装い、代わりに申告するというもので、そのために被告人大城に濵畑名義の銀行口座を開設させた上、同被告人の口座に入金された売買代金の一部を右濵畑名義の口座に移動させるなどしている。このように、本件は、周到に計画された犯行であり、犯情は悪質であると言わざるを得ない。

二  各被告人の個別事情

1  被告人大城は、土地売却による所得税が高額になることから、安易にこれを免れようとして脱税を依頼し、本件グループに対し多額の報酬を支払っているのであって、その刑事責任は重い。

2  被告人津嘉山は、本件グループにおける沖縄の窓口となっていた平良の下で依頼を仲介する役割を担っていたもので、本件に関しては、比較的従属的な地位にあったと認められるが、右グループの沖縄における脱税請負等に継続的に関与していること、本件の報酬として一〇〇万円を受け取っていることなどに照らすと、その刑事責任は決して軽いものではない。

三  他方、本件脱税分についての所得税本税、重加算税、延滞税等(合計約一億二〇〇〇万円)は、被告人大城において、完納されている。

また、被告人両名には、前科、前歴がなく、公判廷において、二度と脱税事件を起こさないと誓約し、本件を深く反省している。

更に、被告人津嘉山は、前記二2のとおり、本件脱税に関しては、比較的従属的な地位にあったと認められる。

四  以上の諸事情を総合考慮し、被告人らを主文掲記の懲役刑及び罰金刑にそれぞれ処した上、懲役刑については、その執行を猶予するのが相当であると判断した。

(求刑 被告人大城 懲役一年二か月、罰金二〇〇〇万円

同 津嘉山 懲役六か月、罰金一〇〇万円)

(裁判長裁判官 長嶺信榮 裁判官 釜井景介 裁判官 河村浩)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例